返ってきたミトラ通信

おおいなる調和を目指してしなやかに生きる。

Planet-earth-11

久しぶりなので、ここまでのあらすじ。

 

環緒(たまお)は母の麻尋(まひろ)と二人暮らしの母子家庭。

環緒が生まれる前に、麻尋は離婚して、物心つく前の息子を元夫が連れて行った。

環緒には、幼馴染で、仲良しの絆愛(りあ)がいる。絆愛は、父の隆三郎(りゅうざぶろう)と2人暮らしの父子家庭。

ある日、環緒は、幼馴染の絆愛と一緒に、ツーリングに出かけたが、事故で入院してしまい、意識不明のまま、未だ意識が戻らないでいる。そして、あるとき、病室へ一人の女性と若い男性が現れた。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「旭さまの病室は、こちらで宜しいでしょうか?」

女性の声が聞こえた。若い男性も一緒にいる。

女性はとても美人だ。目鼻立ちがしっかりしていて、人を惹きつけるタイプ。上品で、どことなく、あでやかさを兼ね備えた感じの女性だ。

若い男はいわゆる塩顔の面持ちをしている。あっさりした顔立ちだ。今どきの若者らしく身長が高いが、一見きゃしゃな感じがする男子という感じだ。

 

「あの~、どちらさまでしょうか。」

麻尋が女性に向かって話しかける。

「申し遅れました。私、神鳴祥子(かみなりしょうこ)と申します。それと、息子の紅蔗(こうま)です。」

女性は、表面上は優しく、ハッキリした口調だったが、どことなく力強さを感じる物言いで話した。

(かみなり・しょうこ。かみなりしょうこ。どこかで聞いたような。あっ、別れた夫の再婚相手だ。なんの用で、いやいや、そもそも何でここを知っているのか? それと、こうま。こうまが未だ幼い頃に夫が連れていた息子。)

麻尋は心の中で、すぐさま思った。

 

「この度は、環緒さんのお見舞いに参りました。旭さまと、2人でお話がしたいのですが、よろしいでしょうか?」

「りあちゃんは娘のようにかわいがっている子なんですが、一緒ではだめですか?」

「できれば、二人でお願いしたいのですが。」

「あ~、そうですかぁ。では、分かりました。」

「じゃあ、りあちゃん、ちょっとの間、外に行っててくれる?」

麻尋は、しぶしぶ、りあに言う。

「こうま。こうまも外に行ってくれるかしら。」

翔子も、こうまにすぐさま伝えた。

 

病室は2人になった。いや、意識のない環緒をいれたら3人だ。

「2人でお話がしたいというのは、どういった御用なのでしょうか。」

麻尋は面白くなさそうに、面倒くさそうに、祥子に向かって言った。

「環緒さんの事故は、自損事故というふうになっていると思います。実は、息子のこうまが言うには、こうまが運転していた車で、環緒さんのバイクを引っかけたそうなんです。環緒さんが意識不明で、この病院に入院していることは警察から聞きました。事故は、既に自損事故で処理されておりますので何も変わりません。このままでは、意識不明の環緒さんが、あまりに不憫でならないと思いまして。それで、今回の件では、こうまには、キツク叱ったのですが。同じ子供を持つ親として、環緒さんのことも心配ですし、何もせずに黙っているのでは、わたくしの気持ちもおさりませんので、本日お見舞いに伺いました。」

祥子は、ゆっくりと丁寧な口調で話したが、麻尋は、なんとなく冷たさを感じた。

 

「あ~それはありがとうございます。」

(「事故の処理はこのままで済ませる?」何だそれ?どういうことだ?)と思いながらも、麻尋は淡々と答えた。

「これは大変つまらない物ですが、こんなことしかできなくて申し訳ありませんが、是非、こちらを受け取っていただきたいのですが。」

祥子は、風呂敷包みの結び目をほどいた。風呂敷をあけると、老舗和菓子店の菓子折りのデザインが顔を覗かせている。

「いえいえ、そんな結構ですよ。お気持ちだけで十分です。真相が聞けただけでも私は満足ですから。」

(「同じ子供を持つ親として?」って、こうまはあんたが生んだ子だったか?でもかわいがってもらっているということだからいいか?)と思いながらも、麻尋はやはり淡々と答えた。

「受け取って頂けないのでは、わたくしも困ります。それに、主人に叱られてしまいますので。」

祥子は、鋭い視線を送り、いくらか語気を強めて言った。

「えっ、あ~、そうですか。では、神鳴さまのお気持ち、頂戴いたします。わざわざお見舞いありがとうございます。」

麻尋は複雑な表情を浮かべながら、お見舞いの品を受け取った。老舗和菓子店の包みのせいか、どことなく重い。

「受け取って頂けて嬉しいです。なんか押し付けてしまったようで、申し訳ありません。それでは。失礼します。」

祥子は、笑みを浮かべて、麻尋にお礼を述べ、部屋を後にした。