返ってきたミトラ通信

おおいなる調和を目指してしなやかに生きる。

Planet-earth-1

(・・・目覚めるときがきました。もう準備はできています。さぁ、目覚めなさい。・・・)

暗がりの向こうから、声が聞こえる。暗がりの向こうには、小さな青い玉が見える。

「誰?誰なの?何のこと?」

すると、青い玉から七色の光が放たれ、七色の光が束となり、光の束が目の前いっぱいに広がっていき、私の全身を包み込んでいく。そして、光に包まれ、次第に明るく暖かくなっていく。

「・・・。・・・ひ。あ・・・ひ。おい、あさひ、旭。寝てたのか? おまえの番だ。瀧内、旭にどこを読むのか教えてやれ。」

古典の先生の声がする。窓から差し込む日差しが、古典の教科書を照らしている。
あっ、そうだ。今は古典の授業中だった。

「たまお? 環緒? 大丈夫? ほら、開いているところの頭からよ。」
「サンキュー。」

「すみません。先生。読みま~す。」
「わらはやみにわずらいたまいて・・・。」

古典の授業は苦手だ。
しかも、源氏物語。最悪だ。光源氏。誰彼かまわず、女と見れば声かけて、終い目には自分の理想の女に育てる。あ~、男ってのは・・・。
女も女だ。高貴なだけの好色色男に心奪われるなんて。昔の人はどうかしている。
チャラそうな男は嫌いだ。

キーン、コーン、カーン、コーン。

授業が終わった。
「環緒。最近よく寝るね~。調子悪いの?」

瀧内。瀧内絆愛。たきうちりあ。私の幼なじみ。同じ高校に通っている。
彼女は、いつも冷静で、頭が良くって、かわいくって、超頼りになる。でも、どこか抜けているところがお茶目だ。
彼女がいないと私はヤバい。

「調子? 大丈夫だよ。」
「今日は、空手の稽古があるから。じゃあね。」

私は、護身用に空手の道場に通っている。その辺の男には負けない自信がある。こう見えても、世界大会に出たこともある。

道場からの帰り道。今日の夜空には雲が無い。いつもに増して星が輝いている。珍しく、大きな三角形が見える。輝く星が見えると、なんとなく嬉しくなる。

「ママ~、ただいま~。ねぇ、ごはん何?おなか減ったよ~。」

母は、昼は近所の神社で巫女の仕事をしている。
夜は神社に併設されたカルチャーセンターで料理を教えたり、踊りを教えたりしている。
娘の私が言うのも変な話だが、母は、めちゃ美人だ。スタイルも良くって、モデルでもやっていけそうなくらいだ。
ただし、ちょっと垢抜けてなく、ちょっと根暗っぽいところが玉に瑕だ。
実は、ウチは母子家庭だ。空手は、自分の身を護るために始めたのだが、この美人の母を不逞の輩から護らねば。と思っている。

「はいはい。おなかすいたわね。ごはんにしましょうね~。」

ピーン、ポーン。
インターホーンがなった。誰だろう?
モニターをみると、いつものオヤジだ。絆愛も一緒だった。
そのオヤジの名前は、瀧内隆三郎。絆愛の父だ。隆三郎おじさんは、私が小さいときから、絆愛と一緒によく来ていた。
隆三郎おじさんは、とにかく声がデカくて、うるさい、というかアツイ人なのだ。雰囲気は、昔テニスプレーヤーだった、どこぞの御曹司のアイツに似ている。そのテニスプレーヤーも今では、おじいさんだ。

「麻尋ちゃん、こんばんは~。いや~、ね~、今日はさぁ、大きな魚が手には入っちゃってねぇ。一緒にどうかと思ってさ。うちだけでは食べきれないんだよね。なぁ、絆愛。それでさ、ついでに、絆愛に魚さばくのを教えてやってくれよ。」

麻尋は、私の母だ。隆三郎おじさんと母は、私が生まれる前からの知り合いらしい。

絆愛(りあ)の家は、父子家庭だ。絆愛の母は、絆愛が生まれてすぐ、原因不明の病で亡くなったと聞いている。

「隆さん、ちょうど良かったわ。みんなで食べましょうよ。りあちゃん、一緒にキッチンに行きましょう!環緒は、隆さんのお話相手になってあげてね。」

母は隆三郎おじさんが来ると機嫌がよい。もちろん、私も好きだ。光源氏とは大違いだ、と思ってる。

料理がテーブルに並んで、用意ができた。そして、みんなでテーブルを囲んだ。
私は、テレビを見ながら、隆三郎おじさんにお酌した。
「おひとつ、どうぞ。おじさん。」
「お~、とっと。ありがとうね。」
隆三郎おじさんは嬉しそうだ。

「パパ、目が垂れてるよ!」
「そうか?ハハハ。」
隆三郎おじさんと絆愛は本当に幸せそうだ。


テレビの番組が切り替わった。

「そういえばさぁ、最近、この人よくでてくるね~。」

母の顔が曇った。

to be continued